お好み焼き放浪記 Nagata Okonomi-yaki Wanderer's

第五回「いりちゃん」の大盛りそば焼&ミックスジュース

いりちゃん

ジュージュー、シャッシャッ。
ジュージューとステキな音そば焼を炒める音も味のスパイスである。丸五市場上の筋、そば焼専門店「いりちゃん」から聞こえるリズミカルなコテと音のハーモニーは、BGMに負けない軽快なサウンドで響いている。

メニューは「そば焼(大・中)」「ミックスジュース」の2品のみ。この連載は「お好み焼放浪記」なんだけど、まあ細かいことは気にしない。旨けりゃいいのだ。ここまでメニューを搾ると、すがすがしささえ感じられる。「不器用ですから・・・」と高倉健ばりのオトコっぽさを感じさせるが、焼いてるのは奥さん。当たり前だが、不器用だからメニューが少ないのではなく、「お好み焼を焼く鉄板(とその火力)と、そば焼は違う(店主談)」からだ。お好み焼はじっくり長時間焼くのに対し、そば焼は強い火力で一気に焼ききる。なるほど、健さんに負けない芯の通ったこだわりに、もうメロメロだ。

見よ、この大盛りを!そば焼の大を頼む。スゴイ山盛り。一人で食べ切れるのか?いりちゃんそば焼のポイントは、ソースの後がけである。好みのソース加減が選択できてウレシイ。七味唐辛子もパラパラし、箸を突き刺す。あまりの大盛りに、箸が埋まりそうになる。ヨイショとかき混ぜる感じで一口。キャベツのシャキシャキ感がスゴイ。麺もほどよく焼きこまれ、あっさりと飽きのこない味。大盛りがまたたく間に減っていく。自分だけかと思ったが、同行のTMOスタッフ2名もガンガン食っている。こんなにお得で、大盛りがたったの450円。中はちなみに350円である。

そば焼名人の入口さんそば焼名人の入口さん裏メニューがある。「そばめし」である。ただ、ご飯は持ち込まないといけない。昔、駄菓子屋とお好み焼屋を兼業しているようなお店が数多くあり、よくタッパーにご飯を詰めて焼いてもらったものだ。20年ぶりに童心に戻る。ただ、子供の頃との大きな違いは、ビールが欲しくなってしまうことだ。このそばめしもソース後がけ。そばの食感、旨みを活かすために、あまり細かく刻まない。箸で食べられるそばめしだ。味も申し分なし。

お好み焼に合う飲み物は数あれど、そば焼に合う飲み物はミックスジュースでトドメをさす。

あまりの美味さに大はしゃぎそれも、いりちゃんオリジナルのミックスジュースに限る。ストローで上品に飲むのもいいが、豪快にグラスから直接飲むのも、贅沢でワイルドである。ミックスジュースの旨さを味わうために、敢えて水を我慢していたので、一口ゴクリとしたときの冷たさ、甘さ、爽やかさ・・・風呂上りのマミーも負けてしまいそうだ。そして、絶対家庭のミキサーではマネできないプロの味。喫茶店などでは確実に500円はしそうなこの逸品、なんと150円!味の秘訣は「ヒミツ」だが、「牛乳を入れない」のがコツだそうである。売れば売るほど赤字のサービス商品である。

いりちゃんのお店情報

※2009年までの情報になります。現在の営業状況につきましては各店舗へお問い合わせください。

神戸デパートでそば焼専門店「金六」からスタートし、震災後丸五市場で「いりちゃん」として再スタート。根強いファンの嘆願もあり、昔ながらの味を守り続けている。そば焼一本勝負の「いりちゃん」は二葉町三丁目、丸五市場で10時から17時まで営業、定休日は毎週火曜日、電話は641-2341です。